高機能マグネシウム合金の成形・利用技術に関する研究
(第1報)
-- 押出成形研究 --
本研究では、マグネシウム合金の機械的諸特性の向上を目的に、粉末を原料とし た成形プロセスについて検討した。最初に、熱間押出成形工程における成形体表面と押出ダイス形状の関係について K1A 合金インゴット材を用いて評価した。成形体表面のマクロ観察より、ダイス入 り口部形状としては R5 が適していたが、ベアリング部長さによる差異は確認され なかった。次に、素材への添加元素による機械的諸特性について検討した。マグネシウム粉 末にジルコニウム粉末を添加した調整粉末を熱間押出成形した。成形温度の上昇に よる組織の粗大化がジルコニウム粒子により抑制されたが、成形体の機械的性質向 上は確認されなかった。さらに、制振合金である MCM(Mg-Cu-Mn 系) 合金粉末にジ ルコニウム粉末を添加した。その成形体の組織内のジルコニウム粒子周辺における 結晶粒微細化を確認した。また、これらの成形体の曲げ強さは、既存のマグネシウム合金鋳造材などよりも著しく向上した。
高機能マグネシウム合金の成形・利用技術に関する研究
(第2報)
-- 絞り加工研究 --
マグネシウムは軽量、電磁遮蔽性等に優れ、筐体への利用に適している。マグネ シウムの成形には、射出成形が適応されている。これは、ほとんど唯一の実用的加 工法である。しかし、マグネシウムの利用をより一層拡げるには、他の加工法も考 慮しなければならない。ここでは、マグネシウムの塑性加工法、特に薄板の深絞り 成形法の確立を目指した。マグネシウムの圧延による機械的及び結晶学的特性変化 を調査し、その変化と深絞り成形性及び深絞り成品の形状特性の関連について調査 を行った。その結果次のようなことがわかった。
- 圧延加工では、動的再結晶が起こり、結晶粒は比較的容易に微細化する。
- 圧延と深絞り共に室温での加工は困難で、加工するには素材を、圧延で 423K 以上、深絞りでは 473K 以上に加熱する必要がある。
- 深絞り成品の側壁の形状不整と引張特性値の間には関連性がある。
高機能マグネシウム合金の成形・利用技術に関する研究
(第3報)
-- 耐食技術研究 --
マグネシウム合金における有効な耐食性評価技術を確立するため、塩水噴霧試験・ 浸漬試験・ガス腐食試験・電気化学試験を行った。耐食性の評価として噴霧試験や浸漬試験などの直接水分に接触する試験方法では、 腐食反応が急激に起こるために、試験片の形状や仕上げによる差が大きく出てしま い、結果がばらついて良好なデータを得る事ができなかった。しかしながら、混合ガスを用いたガス腐食試験を行った結果においては、他の試験方法に比べて良好な データを得ることができた。
超高速加工技術に関する研究
高速切削では、従来の速度域の切削では現れなかったような現象で加工が行われ る可能性がある。従来速度域で確立した切削条件を見直し、高速域での切削現象を 解明して、被削材の種類に対して最適切削条件を確立することが期待されている。 通常、切削加工では被削材の塑性変形が発生するが、切削速度を十分に上げて加工 すると、その発生する時間的余裕がなく瞬間に破壊していき、切削抵抗や切削温度 が従来の切削加工よりも小さくなると言われている。このことを考慮し、超高速切 削の優位性を検証する。すなわち、超高速切削において被削材面粗さが工具回転数 の増加に伴っても増加しないことを確認できれば、それは超高速切削の優位性の一 つの証である。そしてこれによって、最適切削条件が確立されることも可能となる。上記に従う一連の実験から、40,000min-1、60,000min-1 では切込深さや1刃当送り量といった加工能率に関係する切削条件について、これ らを厳しくしても加工可能なことを確認できた。
刃物の耐久性向上に関する研究(品質向上研究)
切れ味及びその耐久性について評価するための評価理論の構築を行った。 理論は、切れ味曲線を指数関数で近似し、この関数の積分値で切れ味の耐久性を評 価することとした。またこの積分値をそれまでの耐久試験回数で除した値を切れ味 性能評価値とした。刃物材料として一般的なSUS420J2 について、焼き戻し 温度を変えて耐久試験を行い評価理論で解析した。 その結果、耐久性と切れ味性能について423K の焼き戻しが一番効果があった。 刃先の摩滅には、摩擦熱の影響が大きいと考え耐熱合金を使用した刃物を試作し、 耐久性や切れ味性能について評価理論で解析した。その結果耐久性と切れ味性能に ついてSUS410 が一番効果があった。また刃先先端に生じる溝幅と切れ味との 関係及び耐久試験回数と溝幅成長の関係を明らかにした。

