機械研究部
金属成形金型用機能性表面被覆処理に関する研究(第1報)
-- 表面改質 --
「エコ」をキーワードに環境に優しい製品に注目が集まっている。ものづくり産業においても、製品の軽量化・材料使用量の削減に向けて高張力鋼板などの使用が増えている。またコストの削減の要求が厳しくなり、成形性の悪い安価な材料への転換、被成形材をより厳しい条件で成形することによる薄肉化も行われている。しかし、これらの方法はプレス成形に使用する金型表面への機械的負担を増し、金型の耐久性が確保できないという問題を引き起こしている。この負担を軽減するため、金型表面の機械的な機能強化が強く求められている。
ここでは金型に電子ビームを照射し、金型表面の幾何学的な変化とプレス成形への適用性について実験を行った。また現在使用されている金型用硬質薄膜が処理工程に依存する付着強さのバラツキの問題を抱えていることを踏まえ、電子ビーム照射を薄膜被覆の付着強さ向上のための下地処理に利用することについても検討を行った。研究の結果、冷間金型用材料のSKD11 の研削面に電子ビームを照射すると、研削条痕は消滅し微小な窪みがランダムに存在する面に変化することがわかった。また硬質薄膜の下地処理については、作成したTiN 皮膜の付着強さが未照射の場合に対し大きくなることがわかった。
使い易い刃物の評価システムの開発(第1報)
刃物の切れ味を評価する本多式切れ味試験機において、切断時の紙の枚数を自動計測可能な装置を開発した。この装置はレーザ変位計を使用し、PC と接続してExcel ファイルに書き込むことが可能なシステムである。従来の紙の切断枚数との比較検証実験では、相関係数0.99 という高い値を示すことが分かり実用可能なことを示した。また使い易い刃物を開発するために、人が包丁を介して切断動作を行う過程での負荷量や動作解析を可能にする実験装置を試作した。
刃物の高品質化に関する研究(第3報)
-- 電気化学的な技術を利用したによるかえり取り手法の開発 --
電解砥粒研磨技術とパルス電解研磨技術を利用したSUS420J2 製刃物のかえり取り手法について検討した。電解砥粒研磨によるかえり取りでは、電流密度≦0.5 A/cm2 で研磨材の擦過により発生する微小なかえりが残留した。電流密度≧0.7 A/cm2 では刃先に多数のピットが発生し、わずかな加工のし過ぎにより切れ味が低下した。パルス電解研磨によるかえり取りでは、ON 時間5 msec.,ピーク電流値20 A/cmEL(刃線1 cm 当たりの電流値)のパルス電流で1 秒間加工することによりかえりが取れて凹凸のない刃先になり、初期切れ味が100 枚を超える刃物を得ることができた。
難削材の切削加工に関する研究
-- CFRPの穴あけ加工 --
CFRP の穴あけ加工について、超硬ドリル、ダイヤモンドコーティングドリル、ダイヤ一体ソリッドドリルの3種類の市販工具を用い、工具摩耗、切削抵抗、被削材の穴径寸法、入口・出口部の欠損・剥離長さ、穴内面粗さについて評価を行った。その結果以下のことがわかった。
穴数の増加に伴う工具摩耗量の変化量は超硬ドリルがダイヤモンドコーティングドリルおよびダイヤ一体ソリッドドリルと比較して大きい。また、ダイヤモンドコーティングドリル、ダイヤ一体ソリッドドリルは同程度でほとんど摩耗が進行していない。穴数の増加に伴うZ 軸荷重の変化量は超硬ドリルがダイヤモンドコーティングドリルおよびダイヤ一体ソリッドドリルと比較して大きい。今回使用した3 種類のドリルにおいて、穴径寸法ではダイヤ一体ソリッドドリル、欠損・剥離長さではダイヤモンドコーティングドリル、穴内面粗さではダイヤモンドコーティングドリルが最適な工具であった。コールドエアーの有無において、有の場合Z 軸荷重が大きくなる。それ以外の工具摩耗、穴径、欠損・剥離長さ、穴内面粗さにおける差違はみられなかった。
金属材料研究部
金属成形金型用機能性表面被覆処理に関する研究(第2報)
-- 固体潤滑剤の皮膜化に関する研究 --
固体潤滑剤である六方晶窒化ホウ素(h-BN)とハイス鋼とを複合した粉末を用いて、パルス通電焼結装置によるダイス鋼材への皮膜化について検討したところ体積比率で15%~38%、h-BN が含まれた複合粉末を用いて200μm 以上の厚膜が形成できることを確認した。この厚膜の摩擦摩耗特性を評価したところ、28%h-BN の複合粉末を用いて作製された皮膜は、ダイス鋼材そのものよりも摩擦係数の変動が少なく、かつ摩擦係数もわずかであるが小さくなる皮膜であることがわかった。
マイクロ波を活用した金属製錬技術の開発(第2報)
マイクロ波加熱による内部発熱を利用する高効率金属系産業廃棄物還元手法を用いて、鍛造スラッジを還元し、銑鉄の回収を行った。マイクロ波炉は2.45GHz のマルチモードタイプのマグネトロンを使用し、最大出力2.5kW、窒素雰囲気下において還元実験を行った。酸化鉄を主体とする鍛造スラッジに黒鉛を重量比12、18、20、24(%)の割合で混合して試料を作製した。12%試料の場合、酸化鉄の還元に黒鉛を消費するため、目標温度1360℃に達しなかったが、粒状の還元鉄が得られた。18%以上の黒鉛混合比試料の場合、1360℃に達し、溶融した銑鉄が塊を形成した。20%の黒鉛混合比の試料では最短の約700 秒で1360℃に達し、塊状の銑鉄が回収され、その還元率は92%以上であった。
粉末を利用した表面処理技術の開発(第2報)
パルス通電焼結装置を用いて、基材と粉体の界面に発生する抵抗加熱と、加圧による固相反応の促進で、製品表面に均一な反応層を形成させる方法を検討した。鉄系合金について混合粉末による硬質な反応層を形成し、性能試験を行ったところ、耐摩耗性・耐食性ともに基材に比べて性能が向上した。また、この技術を様々な形状の製品へ適応させるための試みとして、粉体を製品表面にスプレー塗布し、基材に対応した形状に作製したグラファイト製の型で押しながら、パルス通電処理を行っても、同様の表面層が形成されることを確認した。
摩擦撹拌スポット接合による異種材料接合に関する研究(第1報)
固相接合であり、前処理が不要なことから摩擦攪拌スポット接合(FSSW)による鋼材とアルミ材との接合が注目されている。本研究では、前報4)で使用したプローブのない渦溝ツールを使用してSPCC 材とA6061-T4 材とのFSSW 接合を行い、引張せん断試験および接合断面、破断面の観察を行うことによって接合性能に及ぼす接合時のツール回転数、保持時間、侵入深さ等の接合条件の影響を明らかにした。さらに、引張せん断試験では最高6kN を超える引張せん断強度が得られ、この値はJIS Z 3140 に規定されるアルミ板抵抗スポット継手強度判定基準の3 倍以上で、他の報告2)における鋼材とアルミ材のFSSW 継手の1.7 倍の強度を達成した。
電子応用研究部
刃物の高品質化に関する研究(第4報)
-- 刃先形状測定機構の開発 --
包丁などの家庭用刃物類における切れ味には刃先の形状や表面粗さ、材質の硬さなど様々な要素が絡んでいる。切れ味に影響する要素について刃物製造企業に調査をしたところ、刃先角度が最も切れ味に影響すると考えられていた。一般的に、刃先角度測定は刃物の断面を顕微鏡などで測定するため多くの時間を要するため、著者らは包丁などの刃先角度を短時間で測定するために画像処理を利用した測定機構の開発を行ってきた。一般的に包丁などの刃先は複数の角度で構成されており、刃先の品質管理を行うには刃先形状の測定が必要となる。そこで、本年度は従来の測定装置を利用して刃先形状の測定手法を検証したところ、刃先を構成する角度は±0.4°以下の誤差となり、刃先形状の近似ができた。
無線通信を利用した生産現場の可視化技術の開発(第2報)
製造業においては、生産性向上のため、製造現場の状況を正しく把握し、効率的に管理することが重要である。本研究開発では、既存設備のハードウェアおよびソフトウェアの変更を伴わない、外付けの監視システムを試作し、現場情報の「見える化」を実現する手法を提案する。今年度は、昨年度試作した監視システムを応用し、県内企業において現場情報の取得実験を行った。現場の設備や状況に合わせ、センサ端末のインタフェース製作や機能追加などを行い、現場におけるデータ取得実験を実施し、本提案の有効性を確認した。
精密機械加工のための工具位置・工具摩耗の計測技術開発
高精度化が要求される精密機械加工において、工作機械の熱変形による工具位置の変動や工具の摩耗に起因する加工精度の劣化が問題となっている。本研究では簡便で高精度、なおかつ既存の機械加工設備に取り付け可能な、工作機械の熱変位による工具変位及び工具摩耗の計測技術を開発することを目的とする。本年度は、工具位を計測するための振動型接触検出センサの開発と、工作機械の負荷電流値と加工時の切削音による工具摩耗検出を試みた。振動型接触検出センサは、センサと対象物(工具)の接触速度が100m/s の場合、最大誤差1.22m、標準偏差0.57m が得られた。工具摩耗検出はS45C の外径旋削加工を対象とし、工具摩耗時に切削音の8kHz 付近の周波数成分が増大することを確認した。

